穏やかな日々のために

梅雨に入りますと、日射が少なくなって気圧も下がりやすく、

頭痛がひどくなる人も多いようです。

皆様いかがお過ごしですか?

 

ミトコンドリア病は病歴、病状が様々です。

しかし、病状がわかりにくくて、安定しないのが

患者家族の悩みではないでしょうか?

皆さん悩みがそれぞれ違い、それぞれに深刻です。

穏やかな日々が、私たちにとってどれだけ有難いものでしょう。

 

 

我が家の悩みを話します。

ミトコンドリア病メラス3243変異の龍は睡眠障害がひどくなると

交感神経が立ちやすくなり、興奮して自分勝手にしゃべりまくります。

夜中も寝言、朝も早くから起き上がり、

サカナにエサやり、通所にも週5回朝9時から午後4時まで

(送迎付き)出かけられますが。

 

常に眉間にしわを寄せて独り言が多くなります。

「心の声」

自分はどうしてこんな病気になってしまったのだろうか?

勉強してきたことができなくなったり、

友だととの話もできなくなって誰とも会えなくなってしまった。

このような不安な気持ちをずっとずっと自問自答しているのだろう。

 

「○○先生は忙しくて来れないよ。目の聞こえない人や

車いすで歩けない人もたくさんいて大変なんだよ!」→病院には入院したくない。

「○○君は、友達たくさんいるんじゃない?

忙しくてうちにはこれないんだよ。」→友達と会えなくて寂しい

 

辛いよ、痛いよ、苦しいよ

という感情的な言葉ではなく

時に突き刺すような目つきで

家族の皆にひたすら話し続ける。

彼の中では完結している言葉の連続。→保続状態。

 

もっと悪くなると、出かけた先でも所かまわず話している。

社会性がないと理解できても、家族のやることまで侵食してくると

家族でぐったりする。家での介護に限界を感じる。

ここに暴力や逃避はないが、

家族の生活が脅かされているのは間違えない。

とくに母親の心の余裕がない時は、さらに相乗的に症状は悪化する。

コロナの不安なテレビの情報にも反応していると思われる。

 

先日介護士を通じて、地域の器のある先生と出会い、アルギニン点滴を入手、介護士が一回自宅で施術してくれる機会を得た。

翌日から睡眠が深くなった。流れが良くなったのだと思う。

それからは、彼は自分を取り戻したかのように

以前のように、楽しみに集中する、前の龍に戻った。

 

私のようなふてぶてしく、夢中で周りの迷惑顧みずにやってしまう母親であれば

あり得ることかもしれないが、このような事実を、生活を、世に伝えなくてはいけないと思ったのです。

だから声をあげて認知症が進む患者にもアルギニン点滴を!

保険適応の交渉を進めます。

皆さんの悩みはどんなことでしょう。

どんな時も、どんな症状にも

患者家族が、知恵を分かち合い、つながっていくこと。

患者家族のつながり

医療とつながり、地域とつながり、

我が家の平穏を取り戻すために。

ミトコンドリア病患者家族のために

穏やかな日々を!!

さくらばたけまつりスライドショー

関東梅雨に入りました。

自律神経が乱れる時期です。

湿度で骨をゆるみやすいので

上手に整体すれば

呼吸の通りも

気の道の流れもよくなるはずです。

と思うのですが・・・

ミトコンドリア病メラス精神症状と脳の高次機能障害のダブルパンチは

とても不思議なつながりで

あまり実践通りにいかないところが歯がゆいのですが。

昨日も雨が降り、釣りに行けませんで、

新江ノ島水族館に出かけました。

意外と混んでいました。

みんな開放感からか興奮している息が感じられました。

龍はすごく集中して楽しんでましたが、

水族館のあと、江ノ島の海で釣りに行きたい!

でもいけない、となると、精神状態がおかしくなり

独り言で自分のつらさを吐き出します。

いろんなパターンがあると思いますが

本人の中では、ムンクの叫び。

館内を出て、カフェで一時間ぐったりしていました。

 

メラスの患者様の精神症状は複雑ではないですか?

 

24才にもなって、子離れしてないね、

といわれたら、それまでなのですが

病気と寄り添うために必死です。

叫びは、日に数度起こり、人とのコミュニケーションが

とれない今、コロナの状況だからなのか認知症が進んだのか

わかりませんが

釣り糸のように複雑に絡み

ねがかりして、そのたびに家族は地に落ちたように苦しみます。

ほっとけば!

といわれたらそれまでですが、

介護している方の苦しみは

今いる本人との体と心の対応ですので

簡単にかたずけられません。

 

自分は表現者として

ねがかりを紐解くきっかけとして

息子を表現の中に入れてみます。

その間はとても体も心も軽くなります。

自分は、親という括りから離れて

ミトコンドリアに捧げたい気持ちで

おどっていると

彼も、それを受け止めてくれる、いや自発的に

動いて、揺れている。

そして、脳は改善されていないけど

彼は今ここにいる

仲間がある

とたてなおって、次に進むことができる

これが生活なのかなと思います。

2020年4月19日

自宅近くのさくらばたけで表現者の集まるおベントを計画していました。

今年は延期を余儀なくされ

集う人たちが自発的に

さくらばたけまつりのスライドショーを作ってくれました。

遠隔で、出演者がアメージンググレースをつないでくれた作業は

涙、涙でした。

もしよかったら、ぜひご覧ください。

次男ミトコンドリア病メラスを取り巻く表現者たちの取り組みとしても

開放されるところがあるかもしれません。

https://1drv.ms/v/s!AoZ5JCG44suf4Wd1cZ3JfuvVBwJJ?e=dYsVQh

パスワードは1234

メラスの息子と生き抜く

いのちは、みんなかがやいている

ミトコンドリア病に限らず、

様々な障がい、病を持つひとりひとりの

いのちも、みんなかがやいている

ひとりひとり一生懸命生きている。

辛い体も心も

生のカンバスに

一刻一刻をいのちのありようを刻み込む。

私は、学生時代芝居をやっておりました。

出版社でも働きました。

両方とも苦しくてやめました。

そのあと、言葉のない肉体の表現ー舞踏を始め、自然の中、舞台空間いろんなところで踊りました。

テーマは、いつも、いのちのつぶ。

同時に、思春期から体が弱かったので

自学でヨガをやり、筋肉や神経のつながりを自分の体に教えてもらい、

今もライフワークにしています。

長女が生まれ、長女の周りのいろんな子供たちと舞台を作りました。

いろんな子供と遊びながら、ハンディーある子の素敵さを学びました。

4人の子に恵まれました。次男が17歳でミトコンドリア病メラス発症しました。

ミトコンドリアは、いのちの最小のつぶです。

いのちのつぶを感じると

全てを受け止めることに集中できるときがあります。

いのちのつぶは、感覚を持っていると思いませんか?

私は認知症が進む息子と踊り、絵を描き、粘土を練ったり

息子のミトコンドリアがいろんなことを教えてくれます。

いのちのつぶは、いろんな人を集めてくれます。

我が家では、ミトコンドリアみどりの会懇親会のほかにも

いろんなイベントを企画して

いろんな人が壁を作らず、集う場つくりをしています。

 

イベントに集まってくれた皆さんが

息子と語らってくれて、とても素敵な時間を紡ぎます。

写真はしんかい6500に何回も乗り込み、深海の生き物研究をしている博士です。

皆さんもぜひ遊びに来てください!

病はつらいけど、病がいろんなものを語ってくれると思います。

 

第5回ミトコンドリアみどりの会懇親会について

第5回ミトコンドリアみどりの会

10月31日土曜日11時からオープン

場所:神奈川県秦野市堀西858-1

ひまわりヨガ道場内みどりの会親睦会会場

駐車場は、自宅に3台と近所3台、桂林寺南側駐車場10台ほど必要な方は前もって振り分けますのでお知らせください。

参加申し込みはメールか携帯電話でお願いしています。

遠方の方は、お泊りも考慮したいのでその旨お知らせください。

当日の患者様の様子で参加できないことも考えられますので念のため、予約していただき、当日のキャンセルは気になさらないでください。自宅は入り口が石段のようになっておりますが、車いすの方、足の不自由な方は、スタッフが協力しますのであらかじめ事情をお話しください。会場は一般住宅ですので、会議ができるような大きな会場ではありませんが、2階ヨガ稽古場は24畳ほどのじゅうたん部屋がありますので、会期中にお休みのスペースになれます。

みどりの会は、伊藤の息子がミトコンドリア病発症を機に、いのちの大切さを皆で感じたいと、立ち上げました。

おいしいものを食べたり、ためになるお話を聞いたり、悩んでいることをみんなで分かち合う、ミトコンドリア病を囲む会です。お呼びする先生も、気持ち汲んでくださるあたたかい先生で、みなさんの悩みを共に感じ、患者家族様も打ち解けてお話したいと臨んでくださいます。我が息子も独語が多いのでご迷惑おかけしますが、みなさんがそれぞれ平らになって、この場で何かを感じてくださることができればと思いますので、難しい状況の患者様もお立ち寄りください。

皆さんで命の尊さを分かち合いましょう。

 

今回お呼びする素敵な音ごはんメンバーの紹介です。

2月にも告知していますが、もともとこさん率いる子育て応援バンド「音ごはん」ライブに、感涙した坂井真希子さんが、長女ミトコンドリア病、美音ちゃんの余命宣告を克服する奇蹟を起こすためにピアノ演奏でかかわっています。今回の懇親会に、患者家族の皆さんと触れ合いたいと、遠方からきついスケジュールで参加してくださいます。

たくさんの触れ合いがあると嬉しいです。

 

 

MION〜美しい音のように〜 MUSIC VIDEO

村山先生メッセージ2

今年、2020年の村山先生をお呼びしてのみどりの会の懇親会を7月4日に計画していましたが、延期をすることにしました。(写真は去年のものです)

改めまして

ミトコンドリアみどりの会懇親会を、10月31日土曜日

村山先生もミニコンサート音ごはんメンバーにも承諾をいただきましたので

ひとまずこちらで開催の予定を立てたいと思います。

 

しかし、状況は見えません。難病を抱えた家族一同が集まるということは

念には念を入れて、無理せずに経過をみたうえで決行したいと思いますので

万が一の延期もあるということでお知らせさせてください。

 

現在、どこを見てもストレスが沸き起こりそうな報道の渦。

少しだけでも気持ちが明るく前向きになれますように、

チラシを含めた内容など、改めて告知させていただきます。

元気で過ごして、みんなで笑顔で再開できるようお祈りしながら

日々大切に過ごしていきたいと思います。

皆さんお元気で。

村山先生からのメッセージ、(メール頂いてから少し時間が経ってしまいましたが、)お届けします。

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先日は夜中に欧州各国のミトコンド研究者とウェブ会議をしました。夜中の会議って眼がギンギンです(あちらは昼間ですが)。
診断と治療の国際連携の重要性を再認識しましたが、これはコロナでも一緒ですね。粛々と前進するのみです。
あと、近所の「居酒屋山ちゃん」が、「お家で山ちゃん」に変わりました。これもいけます。
日々の新たな発見を楽しみとパワーにかえ、1日1日を充実してお過ごしください。
Good Luck!!

先生からのメッセージ:長友先生

風薫る5月。立夏過ぎて、気温も湿度も増してきました。

普通でも、少し脳に影響が出るこの時期です。皆さんお変わりありませんか・

龍は睡眠障害が落ち着かず、精神の不安定さがぎりぎりにきているようでもあり、

手足を触るとぬるっと冷たいので、急性期の痙攣時代がよみがえり、胸が重苦しくなります。

メラスの悪状況を改善してもらってきた、アルギニンの点滴を打ってもらいたい時期です。

しかし、、、

地域の精神科の主治医が変わり、アルギニンは保険適応になっていないので、点滴は無理だといわれてしまいました。

そんな朝、愛媛の長友先生からうれしいメッセージが届きました。

前回のミトコンドリア病患者公開フォーラムで新生児ミトコンドリア病についての講義をお聞きして、その前向きなお人柄に、お便りさせてもらっていました。

少しでも皆さんの周りにやさしい風が流れますように。

長友太郎先生からの、みなさんへ、

健康への願いを込めたメッセージです。

 

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私は愛媛県の松山市に住んでおり、家の近くに市の中央消防署があります。
そこでは若い隊員さんたちがしょっちゅう消防署の周りを走っています。
重そうな防護服を着て背中にボンベを背負ってひたすら走っています。暑い夏の日もです。
また、時には屋上にある設備を使ってビルからビルに移り渡る映画のワンシーンのようなすごい訓練をしています。
そして私は隊員さんの汗まみれの真剣な姿を見るとなぜか胸にジ~ンと熱いものを感じるのです。
“私たちはこんな人たちに守られて暮らしているんだなぁ”

新型コロナウイルス、という言葉を見るのも聞くのも嫌になるような生活が続いています。
しかしこの感染症で唯一私たちの気持ちを楽にしてくれるのは、
”どうやら赤ちゃんや子どもがかかって重症化しやすい病気ではなさそうだ”という情報です。

では、そのような状況で私たち新生児科医は何をしているのでしょうか?
感染した妊婦さんの出産、その新生児への対応などを想定して何度も何度もシミュレーションを繰り返しています。患者さんがいなくてもいるつもりで寸劇のような訓練の繰り返しです。新生児に限らず、きっと全国の小児科医が同じようなことをやっているでしょう。
消防隊員ほど肉体的、精神的にハードな訓練ではなくても私たちはしっかりと準備しています。
ようやく「出口」という言葉をニュースで聞くようになりましたがまだまだ用心は必要です。
それでも、万が一感染してしまっても、本気で準備をして待ち構えている人たちがいることを知って少しでも気持ちが軽くなってくれたら嬉しいです。

愛媛県立中央病院 新生児内科 長友太郎

いのちにエール

ミトコンドリア病研究に身を傾けてくださる先生方へ

メッセージを送っていただき、本当にありがとうございます。

 

私たちミトコンドリア病患者家族は

コロナウイルスのこのような切迫した時期の到来にもかかわらず、日々逼迫した身体と向き合っております。

ミトコンドリア病に限らず、

ある障害を持ち

ある病を持ち

生きていくうえで

大変な状況の人には

コロナの状況以前から頻拍した状況でしたから。

いろんないのちがあることを

周知してもらい

いろんないのちが手をつなぎあえたらと思っています。

私は、今日、秦野の自然と

密接につながってきました。

四十八瀬の河原で

野フキをとり、

おひさまにあたり、

フキみそ

フキ料理して

自然をいっぱい感じました。

患者家族が自然を感じて少しでも笑顔が取り戻せたら

いいなと心から思いました。

 

 

先生たちからのメッセージ3 大竹先生ミトコンドリア病の診断と治療:今昔

去年のフォーラムで、大竹先生の5-アミノレブリン酸の講義をお聞きしました。

先生の厳粛な講義の最後に目の悪い猫ちゃんが登場して、

「病気を持つ猫がいとおしい」と、締めくくられました。

研究の厳しいお顔の向こうに秘めるやさしいまなざしを見た時に、ー病に出会ったからこそ、触れ合える優しさーと、だいじにに心にしまいました。

このホームページのメニューぬくもりの部屋に大竹先生んちの猫ちゃんのコーナーがあります。

是非この記事のあと、立ち寄ってください。

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ミトコンドリア病の診断と治療:今昔
埼玉医科大学病院 小児科/ゲノム医療科 大竹 明

 

2020年4月始め現在、私たちの手元には2620家系4119名にのぼる方々からの6935検体がございます。まずは一重にご協力頂いた患者さん・ご家族、そして主治医の先生方のご協力に感謝いたします。

思い出すのは第1番の患者さんです。出生前から脳室拡大を認め生後すぐに強い高乳酸血症を来たし、当時有効とされていたジクロル酢酸ナトリウムやビタミンB1等の使用も効果なく生後3か月あまりで死亡されました。姉も同様症状で生後すぐに亡くなっておられました。翌年私はメルボルンLa Trobe大学のMike Ryan先生の下に留学し、Royal Children’s HospitalのDavid Thorburn先生の助けも借り、この患者さんの解析を行わせていただきました。

結果は図1a, 1bに示す通りで、呼吸鎖Iの量・大きさは対照と差を認めませんでしたが、活性が綺麗に低下しており、呼吸鎖I異常症との診断が確定しました。これが日本で最初の新生児・乳児ミトコンドリア病ではないかと思います。

図1b.呼吸鎖酵素活性測定結果.
Pt: 患者、SDH: クエン酸脱水素酵素

私の帰国後、千葉県こども病院の村山圭先生が続いてメルボルンへ留学し呼吸鎖酵素アッセイ法を習得して帰国され、さらにその後ミュンヘンのHolger Prokisch先生の教えも受け、現在は順天堂の岡﨑康司先生を始めとする多くの研究者の皆様との共同で、年間1000例に達する依頼患者さんの解析をこなしております。
私たち臨床医の究極目標は治療法の開発です。日本の研究はかなり進んでおり、私の行っている5-アミノレブリン酸を始め、国内で開発されつつある新薬の多くは、外国からも引く手数多となっていることを申し上げておきます。

そして最後に強調したいことは、患者会や各NPO団体の方々との協力です。患者登録制度は、病態解明に加え新薬治験の参加者を募るためにも一刻も早い整備が必要です。
私もまもなく定年の年を迎えますが、多方面の方々(写真)と協力し、今後も患者登録と治験を中心に、まだまだ頑張って参りたいと思います。

皆様と力を合わせ、未来が明るいことを信じて、このコロナの難局を乗り切りましょう。

資料

図1a1b.呼吸鎖酵素活性測定結果.
Pt: 患者、SDH: クエン酸脱水素酵素

 

田中先生メッセージ2

田中先生が一線の研究者の研究に触れられて、

送ってくださいました資料を紹介します。

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横浜市立大学の佐藤彰洋教授の文章を転記します。
田中雅嗣

ウイルスと共存する長期戦略は存在しない
2020年3月29日版

文責:佐藤彰洋 (ahsato@yokohama-cu.ac.jp)

今回のCOVID-19の感染拡大は基本的に「疫病」と古来から呼ばれる現象です。この規模は100年間以上一度も発生してこなかったので、誰も、この現象を見たこともないし経験したこともない。しかし、これは、建物は破壊されることなく、人の生命だけが失われていくという大規模災害と理解すべきなのです。

そして、理論的には、「ウイルスを消滅させ終息させる」か、「全員がウイルスにかかり病気になる」かのどちらかしか、解はないのです。これは理論的には、パーコレーション理論における浸透閾値問題に帰着されます。

そして、爆発的な感染拡大「オーバーシュート」と呼ばれている現象は、感染者数の指数関数的な増加の現象をさしています。 この爆発的感染拡大が発生しますと、日本国の全人口に向かって1週間で約10倍の増加速度で感染者が増加していきます。この事態となりますと基本的に制御不能です。

停止させるためには極めて厳しい都市封鎖と移動制限を課す以外に道がなくなります。これが起こり始めるのは、4月9日頃、そして我々の意思決定でそれを制御できるのはその14日前の3月26日頃でした。

3月28日から関東(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、山梨県)は休日の外出自粛に入り、関西(大阪府、兵庫県)で外出自粛に入っていますので、明日からも引き続き人との直接接触を行わないという行動選択をこの地域において今後10日以上は取って頂きたい。これにより、東京都と大阪府でそれぞれここ数日確認され始めました、感染者数の急増、増加現象を抑え込むことが可能となると共に、近隣県で今後始まる急増に事前に対処できるようになると考えます。

この仕組みは、我々が日常的に行う人と直接接触を介在して感染が繰り返される連鎖(感染連鎖)を直接接触しないことで未然に止め、感染連鎖の増殖を止めることを意味しています。

更に全国的に見ますと、感染者数が3000人~5000人を超えた当たりで医療と隔離の容量を超過した段階で一気に現在の感染率が上昇し、この爆発的感染拡大が始まります。これは、これまで医療機関で隔離され感染が抑制されてきた効果が、医療設備と人員の能力上限を突破することで無効となり、感染者が未罹患者へ感染をさせることを押さえきれなくなることで発生します。

私の計算では、何もしないとやはり、4月9日からこの医療容量の超過が始まりまして、感染者数を1万人を超えたところから、10万人までその1週間後、100万人までその2週間後、1000万人までその3週間後と増加していきます。

おそらく100万人を超える当たりから、あらゆる産業セクターで感染者が確認されるようになり、産業活動を再起不能な形で停止する以外に道がなくなります。

更に、電力インフラセクターでこれが起こり始めますと、運転員、保守員が大量に発症することで、運転不能に陥る現象が起こり、発電量の著しい減少とともに、感染者数1000万人まで到達する時点で、全ての社会インフラが停止し、再起不能となるリスクシナリオが顕在化すると考えています。 水道やガス、通信、公共交通も全て何等かの形で常に電力を必要としますので、電力セクターの停止はすなわちあらゆる社会インフラの停止をもたらすのです。

このような指数関数的な爆発的な感染拡大(すなわち指数関数的な感染者数の急増)の状況が一旦始まりますと、どれほど医療設備を準備し、人員を尽くしても、どれほどの資源を事前に準備しても、社会インフラが停止するという意味でもはや現代社会の恩恵を受けて生活している誰も助かる方法がないのです。

すなわち、このウイルスとの闘いが、「長期戦」であるとか、「ウイルスとの共存が可能」であるという幻想は捨て、

「ウイルスを消滅させるか我々がウイルスに消滅させられるかの二者択一の問題であり、その意思決定は、我々がこの2週間の行動をどうするかで全て決まる」

ということを強く主張させて頂きたい。

具体的行動としまして、この2週間で不要不急の外出だけでなく、生命維持に直接かかわらないあらゆるヒトとの直接接触を伴う社会活動を完全に停止させるレベルまで経済社会活動を低下させて頂きたい。

「経済を蘇らせることは、死者を蘇らせるよりはるかに容易なことなのです。」

死者を蘇らせることは不可能ですが、経済は、我々が生きてさえいれば、いつでも再生可能なのです。 正しく短期決戦でこの疫病を終息させる。 この戦略以外には我々が生存できる選択肢は存在していないと考えます。

ひとりでも多くの方にご理解頂き、また、その意思決定ができる、この残りわずかな1日、2日において、一人でも多くの方にこのことを知っていただき、ご理解とご協力をお願いしたいと考えます。

どうか、この極めて重要な分岐点に我々が今いるのであるということを、ご認識頂き、一人でも多くの方にこのことをお知らせ頂きまして、国民の皆様が一人でも社会的距離戦略を採用し、2週間はヒトと会う頻度を最低でもこれまでの1/10以下に低下させて頂く活動にご参加をお願いしたいと考えます。

そして、爆発的感染拡大を抑止し、指数関数的な感染者数の増加局面に入ることを避け、この「疫病」を終息させる活動へのご参加とご協力を皆様にお願いしたいのです。 具体的な、行動については、以下に記載してあります。

• https://www.fttsus.jp/covinfo/our-action/
• https://www.fttsus.jp/covinfo/social-distancing/

先生たちからのメッセージ2 田中先生

 

ミトコンドリア病患者家族とミトコンドリア研究の先生たちとの懇親を

今こそ深めるべきだと思っています。

自分が交流できる先生とメールでお願いして患者家族に向けての情報をいただき、エールの交換ができたらと思います。

今回は、ピルビン酸ナトリウム生みの親、田中雅嗣先生からのメールです。

ドクター相談室には、2007年から、ピルビン酸ナトリウムの見解など精力的にコメントをくださっています。

今春のミトコンドリア病研究患者公開フォーラムでは田中先生のミトコンドリア入門の講義を楽しみにしておりました。

田中先生からのメールは2回に分けて送ります。

以下田中先生のメール内容です。

 

田中先生ありがとうございます。

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ミトコンドリア機能の低下があると、新型コロナウイルス(COVID-19)による重症急性呼吸器症候群(Severe Acute Respiratory Syndrome)が重症化するというデータはまだ無いと思います。
ミトコンドリア病の患者・家族のみなさんは、普段から用心深く、外出を控えているので、
ウイルス感染にかかりにくいでしょう。

伝染病は、病原体(ウイルス)と宿主(ヒト)の関係です。
集団の中で感染が拡大していく過程を「SIR」という数理モデルで考えます。
集団の中に、抗体を持っていない感受性保持者(Susceptible)が、ウイルスを撒き散らす感染者(Infected)に接触すると、「S」から「I」に変化します。体内で抗体ができると回復者(Recovered)「R」となります。
インフルエンザの場合には、解熱してから48時間待てば、ウイルスを排出しなくなるので、出勤が可能になります。
しかし、新型コロナウイルスの場合は、潜伏期間が長く、感染してもほとんど無症状の人がいるので、自分では感染者であるという自覚がなく、多くの人々にウイルスを撒き散らしてしまいます。
大流行が自然に収まる時には、多くの人が抗体を持っている回復者「R」になります。
感染者を集団から完全に除去してしまえば、隔離者 Removed「R」になります。
感受性を有する人(Susceptible)にワクチンを接種すれば、抵抗性を有する人Resistant「R」になります。
(このように「R」はいろいろな意味になります)
インフルエンザの予防接種を、集団の中で7〜8割の人が受ければ、大流行は抑制されます。
感染爆発を防ぐには、感受性を有する人「S」と感染者「I」の接触(コンタクト)を避けために、社会的距離(Social Distance)を保つことが必要です。感染者を病院で隔離ができなければ、家庭内で隔離を続けるしかありません。
新型コロナウイルスに対するワクチンの安全性が確認され、多くの人が接種を受けるようになるまでは、小さな規模の集団感染(クラスター)を生じるたびに、その拡大を抑制する措置を講ずるしかないでしょう。
長期戦になると思います。

中国・韓国・台湾・日本でCOVID-19の感染拡大を抑制することができている。
一方、ヨーロッパやアメリカでは感染爆発が起きた。
ニューヨークでは、アフリカ系アメリカ人の死亡率が、ヨーロッパ系アメリカ人の死亡率よりも高いことが報告されています。
これは、社会経済学的な格差が原因かもしれませんが、遺伝的多様性による差かもしれません。
私は遺伝的多様性に興味があります。
COVID-19が細胞に侵入する時に、最初に結合するタンパク質がACE2です。
ACE2は血圧調節に関与しており、ACE2遺伝子の多型によって、抗高血圧薬の効き方に差があります。
ACE2遺伝子はX染色体にあります。
ACE2多型の一つに、AタイプとGタイプがあります。
Gタイプを持っているアジア人男性は50%で、Aタイプを持っているアジア人男性は50%です。
Gタイプを持っているヨーロッパ人男性は25%で、Aタイプを持っているヨーロッパ人男性は75%です。
Gタイプを持っているアフリカ人男性は10%で、Aタイプを持っているアフリカ人男性は90%です。
もし、Gタイプの男性がCOVID-19に抵抗性があり、
Aタイプの男性がCOVID-19に感受性があると仮定すると、
世界における感染爆発の地域差を説明できます。
また、女性と男性と比較すると、男性の死亡率が高いことが注目されます。
女性はX染色体を2本持っているので、AAタイプ、AGタイプ、GGタイプに分かれます。
女性では、X染色体の一方がランダムに不活性化されます。このため、
GGタイプとAGタイプの女性はCOVID-19に抵抗性があり、
AAタイプの女性はCOVID-19に感受性があると仮定できます。
GG+AGタイプを持っているアジア人女性は75%です。
GG+AGタイプを持っているヨーロッパ人女性は43.75%です。
GG+AGタイプを持っているアフリカ人女性は19%です。

自分のACE2多型を検査し、
Gタイプを持っている人は感染しにくいので、用心深く通勤を続ける。
一方、Aタイプを持っている人は感染し易いので、在宅勤務にする。
(この仮説が正しくても、差は大きくないので、両方のタイプの人が外出を控えるべきです)
Aタイプの人が発症したら、優先して集中治療を開始する。
遺伝子差別になるかもしれませんが、こんなことを想像しています。

感染が終息に向かったら、ACE2多型の研究ができると思います。

(なお、ペストの場合は、ペスト菌をネズミが媒介するので、都市環境(下水道)を整備しないと収束しませんでした)

順天堂大学大学院医学系研究科神経学 客員教授
イムス三芳総合病院 臨床検査科 部長

田中雅嗣