ミトコンドリア病:筋力低下など、治療薬候補の効果確認
進行性の筋力低下などが起こる国の指定難病「ミトコンドリア病」に関し、東北大と岡山理科大などの研究グループは、治療薬になる可能性のある物質と作用の仕組みを確認できたと発表した。現在サルを使って実験しており、安全性が確認できれば患者に投与する臨床試験(治験)に入る。欧州のオンライン臨床医学専門誌に論文が掲載された。
ミトコンドリア病は細胞内の器官「ミトコンドリア」の働きが落ちる病気。エネルギー源のATPという物質が作られにくくなるのが原因で、臓器の障害や筋力低下、発育の遅れなどさまざまな症状が表れる。治療法は確立していない。
研究グループは、腎臓病患者の血液中にあった物質を改良して治療薬の候補「MA―5」を作製。マウス実験では効果を確かめた。これを患者の皮膚から培養した細胞に投与したところ、25人中24人の細胞でATPの合成が活性化された。ミトコンドリアの表面のたんぱく質とMA―5が結合することで、ATPの合成を後押しする酵素の生成が進むと考えられるという。
東北大の阿部高明教授(腎臓内科)は「実験段階では副作用もなく、治療薬の候補として有望だ」と話す。
(2017/06/11 毎日新聞 朝刊)