小坂仁先生の ミトコンドリア病治療薬の創薬に関するお話

皆様お待たせいたしました。

祝11月3日水曜日に開催いたしました「小坂仁先生を囲んで。オンラインみどりの会」では、先生よりミトコンドリア病治療薬の創薬に関する大変貴重なお話をいただきました。改めて、先生の実直な研究姿勢を感じ、感謝の気持でいっぱいです。

本日は、そのお話のレポートをお送りいたします。皆様の参考になれば幸いです。

(もし内容に誤りがありましたらお知らせください、訂正いたします。よろしくお願いいたします。)

 

小坂先生の ミトコンドリア病治療薬の創薬に関するお話

 

ミトコンドリア病の承認薬は、現在2種類しかない
イデベノン (ヨーロッパで承認されている。レーバー病という視力が落ちるミトコンドリア病限定のお薬)
タウリン  (川崎医科大学が中心になって承認を受ける。「MELASにおける脳卒中様発作の抑制」に効果)

ミトコンドリア病とは
狭義: 呼吸鎖複合体での異常
広義: 呼吸鎖複合体が正常に働くためには、ミトコンドリアにきちんと材料が運ばれないといけないし、老廃物が外に出ないといけない。呼吸鎖複合体の住まいであるミトコンドリア自体の健康が損なわれたときもミトコンドリア病という。

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QMA5について教えて下さい

編集者注
(東邦大学理学部生物学科のHPより抜粋)
ミトコンドリアは、その内膜上にある呼吸鎖複合体において、酸化還元反応を利用したエネルギー代謝により、ATPを産生しています。具体的には、複合体 I ではNADH、複合体 IIではコハク酸をそれぞれ酸化することで、ユビキノン(CoQ10)を還元してユビキノールにし、複合体 IIIでユビキノールを酸化することでシトクロムc(cyt c)を還元します。複合体IVでシトクロムcが酸化され、酸素分子に電子を伝達することで水に還元します。この過程でミトコンドリア内膜を隔ててH+勾配が生じ、このH+勾配を駆動力としてATPを合成します。』
以上編集者のまとめ

A:ミトコンドリアの呼吸鎖の5番(電子伝達系の5番)は 昔の自転車に付いていた発電器(ダイナモ)と似ています。ダイナモがくるくる回転しながら(発電して)光を作るように、ミトコンドリアの中で回転しながらATPを作っている。
MA5は、そのぐるぐる回るところを強くする。ぐるぐる回りやすくする。

呼吸鎖は、プロトン(=陽子。水素原子から電子を取り除いたH+[水素イオン]のこと)を片側に溜め込む。その片側に溜まったプロトンが、雪崩のように落ちて発電機を回す。
MA5はこの角度を急峻にする。(H+勾配を大きくする という意味?)
そのため、雪の滑り落ちる速さが早くなり、発電機がより早く回って光が明るくなる。(=より多くのATPが作られる)つまり、MA5は、ミトコンドリア病の根本的な所、ATPを作るというところに作用しているので、色々な臓器の症状に効果があるはず。

Q: MA5の働きは、巾着袋のようなものだと聞いたが?
A: 巾着袋の紐を強く絞めればば(絞めて力を加えれば?)、なかの小豆が勢い良いく飛び出す。それと似ている。
MA5はミトフィリンという蛋白質に結合して、プロトンを勢いよく噴出する助けをする。

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アポモルフィンについて
リー脳症の患者の皮膚の細胞に「酸化ストレス」をかけると、細胞が死んでしまう。
そこで、世界中の「脳に行く薬?」約300種を購入し、その中から、酸化ストレスを掛けても細胞が死ななくなるような薬を探した。

編者注:酸化ストレスとは
活性酸素は、呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が、通常よりも活性化された状態になることをいいますが、活性酸素の産生が抗酸化防御機構を上回った状態を酸化ストレスといいます。
(出典:厚生労働省 eヘルスネット)

具体的には 患者の皮膚の維芽細胞が酸化ストレスに脆弱なことを利用し、酸化ストレスで弱らせた維芽細胞に300種類の薬品を投与し、弱った維芽細胞を回復させる(正常に近づける)ような薬を探した。

すでに認可されている「イデベノン」を投与したときの生存率が50%なので、それ以上の生存率を示す薬を探したら4つほどの薬が見つかり、その中でもアポモルフィンが特に低濃度でも効くということがわかった。

しかも、アポモルフィンは他の3つの薬と違って、ATP産生を増やすということがわかった。
こういう薬はあまり知られていない。

酸化ストレスから細胞を守るだけではなく、ATP産生も上げてくれるということで、ミトコンドリア病治療薬としては有望だと判断した。

アポモルフィンは、パーキンソン病の治療薬として長く使われており、しかもヨーロッパでは持続投与が承認されている。(日本では持続的な投与は認められていない)

なお、パーキンソン病治療薬として有効なアポモルフィンの「ドパミンアゴニスト作用」は、今回の「細胞死抑制機能=ミトコンドリア病の細胞を元気にする作用」とは、全く無関係であることがわかっている。

古賀先生たちが開発なさったミトコンドリア病のバイオマーカーにGDF-15というのがあるが、患者の細胞に酸化ストレスをかけてGDF-15の数値を上げた細胞にアポモルフィンを投与すると、GDF-15の数値が正常に戻ることが確認された。(編注:ミトコンドリア病患者では、GDF-15の数値が高くなる)

(編注:これは、バイオマーカーDGF-15が、治験時の治療行為の有効性を評価するための指標として採用可能なことを意味している。治験において、効果を数値で評価することが難しいリー脳症には、有り難いこと?

また、リー脳症のモデルマウスを使った実験では、アポモルフィンを注射したマウスは、運動機能が向上することがわかった。(くるくる回る滑車を使って実験で、アポモルフィンを注射したモデルマウスは、何も投与しないモデルマウスより長時間滑車上で走り続けた)

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アポモルフィンの現状
昨年度、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構。内閣府所管の国立研究開発法人=お金を出してくれるところ^^)に応募、採択された。

今やっていること
リー脳症のモデルマウスをつかって、どのくらいの濃度だと運動機能が良くなるかを調べている。

来年の予定
薬がどのように吸収され、どのように効いていくのかを調べる「薬物動態試験」を行う。

2~3年目
幼児・子供に使っても大丈夫か確かめるための「幼弱ラット反復皮下投与毒性試験」を行う。

それと並行して、PMDAと相談しながら、治験のプランを練る
(PMDA:国立研究開発法人日本医療研究開発機構。内閣府所管の国立研究開発法人。薬の認可をする所)

あと2年半くらいで、治験の計画書を提出する予定。
令和4年度位から 治験を始めたいと思っている。

研究体制
海外の協力企業 ブリタニア社、他
国内の協力企業 (株)ノーベルファーマ
治験実施拠点 自治医科大学
研究代表者 小坂仁先生
研究分担者 宮内彰彦先生、久米晃啓先生、相澤健一先生
ミトコンドリア病診断拠点
研究分担者 埼玉医科大学 大竹明先生
研究分担者 千葉県こども病院 村山圭先生

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編集文責;みどりの会

オンラインみどりの会茶話会お知らせ 毎週月曜日

 

 

毎週月曜日11時からオンラインみどりの会茶話会

 

みどりの会の患者会を立ち上げた一つの理由が

患者家族同士の交流でした。

思いの丈をぶつける場所はどこにあっっても良いと思います。

近所の友だちでも、親戚でも、ソウルフレンドでも・・。

ミトコンドリア病ならではの悩みは尽きないものがあると思います。

私はどんな立場であれ、ミトコンドリア病の方の悩みは

相通じる物があると思います。

だから患者会を通じても、相談されるかたどなたとお話しても、どこ

かで知恵を頂き、感じあえます。

毎週月曜日、体に良いストレッチをしています。

老若男女・運動苦手・体硬いオールマイティー

先日の小坂仁先生を囲んでの患者会でも、有酸素運動の必要性をお話くださいました。

無理な筋肉トレーニングではなく、呼吸感応体としての、伸ばしている箇所に酸素を送り届けるような簡単なストレッチや、ツボ押し、気ままにやっています。理学療法士の方の指導もお聞きしたいですね。

やりたいことをやりたい人がやってもいいみどりのオンラインタイムにしたいので、こんな事やってみたい人は是非お知らせください。

 

11月の予定

8,15,22、29全月曜日

時間11時から1時間。参加費無料

zoom機能を利用して、音楽を流したりしながらやっています。

対象:会員制ではありません。ミトコンドリア病患者本人、介護の方どなたでも。

連絡先:himawarinotubu@gmail.com

1 お名前

2簡単なプロフィール(お住まい、病名など)

3zoom招待メール送り先 連絡先の電話番号

4希望・注意事項(例えば、ヘルニアの経験あり等)などなんでも

ストレッチなど内容の希望をお聞きしたいので前日までにメールください、例えば腰痛予防とか、本人へのマッサージの仕方指導とか、何でも言ってください。

アルギニン保険適応第一段階クリア!

 
メラスの急性期にアルギニン点滴を!
 
メラス慢性期自宅療養の不穏時にアルギニン点滴を!
 
日本のどこでも繋がれる道のために、
みどりの会で声を上げてきた、アルギニンの保険適応のステップ1が
古賀靖敏先生により、成就されました。
日本先天代謝異常学会理事会で、学会から日本小児科学会薬事委員会への承認申請書が受理されたというお知らせを受け、5日の朝は晴れやかな朝となりました。
この資料を作り上げるのに、どれだけの労力が必要か、私達の想像を遥かに超えた、努力の賜物です。
アルギニンが、一歩一歩階段を上る姿を、想像して、胸が熱くなります。
龍も、ずいぶん筋力が弱くなり、精神状態がわるくなりましたが、この朗報に、彼のミトコンドリアは、気を取り戻していってくれるのではないでしょうか。
第一段階クリアを、真摯に受け止め、更なるステップに、祈りを捧げます。
 
**********古賀先生からのお手紙
11月3日開催された日本先天代謝異常学会理事会で、学会から日本小児科学会薬事委員会への承認申請書が受理されました。
今後は、日本先天代謝異常学会から日本小児科学会薬事委員会へ提出されます。
日本小児科学会理事会から承認された場合、厚生労働省薬事委員会へ提出され、保険機構審査委員会への提出となります。
まずは、第一段階クリアです。


古賀靖敏

 

小坂先生を囲んでのオンラインみどりの会 報告

11月3日13時~15時まで
今回のzoom会は、小坂仁先生、みどりの会オブザーバーで遺伝カウンセラーの加藤由里子、技術スタッフ山下祐司を含めて、総勢16名で行いました。
(今回は傍聴のみの方も自由に参加できるように配慮いたしました)
今回のみどりの会zoom会では、小坂先生のミトコンドリア病治療薬の創薬に関するお話を始めとして、てんかんのお話、生活する上での心身のメンテナンスのお話など、患者家族同士の意見交換も含めて、活発な話し合いが行われました。
MA5とアポモルフィンという新薬の治験状況については、小坂先生の貴重な画像入りのお話しがありましたので、詳細はまとめて後日ご報告させていただきたいと思います。
てんかんのお話では、メラス、リー脳症、遺伝子のわからないお子さんなど、それぞれの患者さん状況に即して、先生が的確なアドバイスを与えてくださいました。
2時間という短い時間でしたが、小坂先生はみなさまに適切に、多方面からのアドバイスをなさっていて、その誠実なお人柄が伝わってきました。
また、小坂先生とのやりとりで使われた詳細なてんかん症状、精神症状などの記録は、ミトコンドリア病患者の貴重な資料となりえると思いましたので、御本人の許可を得て、今回の配布資料に掲載させていただきました。
その記録は、年齢・自然環境・生活環境・本人の個性等々が様々に絡み合って、不可解な病状を表出しているのだと感じさせます。
会を重ねるごとに思いますが、年齢・病状・予後それぞれが違えど、患者さん一人一人の記録、先生のアドバイス一つ一つが、命を形成する最小単位、ミトコンドリアについての知見となり、それが私達の生活の糧となるのだと実感いたします。
小坂先生からも、「みなさまとお話しして勉強になりました。また頑張ろうという気持ちになりました。」と、大変嬉しいメッセージをいただきました。
今後も、皆さんの声を元に、みどりの会患者会を企画して行きたいと思っております。もし、参加したい企画があればどうぞご連絡ください。

みどりの会zoom患者家族会~小坂先生を囲んで~Ⅱ

 

小坂 仁  先生

 

11月3日の患者家族に先立って、小坂仁先生からメッセージが届きました!!
4年前に膵癌の疑いがあった時の様子を、ミトコンドリア病医療推進機構の機関誌に寄稿したものだそうです。

 

『晩夏のある日に』
自治医科大学小児科学 小坂 仁

いつものように受診した健康診断で、膵臓頭部に腫瘤があり、膵管の拡張がありますと言われた。10月の出来事である。目の前が白くなった。外科系疾患に詳しくはないが、膵臓がんが疑われている。その治療が困難なことは知っている。御迷惑をおかけするため、親しい方々にすぐにご連絡をしたところ、ありがたいことに当日にCTを初めとする検査が組まれることになった。検査まで3時間。術前検査をひととおり済ませ時間が空いた。

日々刹那的に過ごしていた矢先の出来事である。真っ先には両親、家族に申し訳ないとの気持ちが浮かんだが、之ばかりはしょうがない。次に考えたのは、化学療法を受けるべきか断念するべきか、頭が鈍る薬剤は極力さけ、とにかく痛み止めはきちんと使ってもらおう、しかし後輩からの論文の指導が続けられるか、そもそも病棟でWifiはきちんと入るだろうかなど、現実的な悩み事が浮かぶ。小児科病棟への渡り廊下から見える病棟を囲む手入れされた花々と、周囲のからまつ林が今日はひどくキラキラして眩しい。本日の検査のあと、今後の方針が話されるであろう。その時取り乱さないように主治医からの話をきちんと聞けるであろうか。教育病院なので、若い研修医、学生もいるかもしれない。あまりみっともない対応はしたくない。病気は受け入れられないが、覚悟を決めよう。

何が心残りなのだろうか?若い人と取り組んでいるミトコンドリア病治療薬のことが真っ先に頭に浮かんだ。医者になって最初にやった実験は、血液からのPCR, ApaI酵素処理によるMELAS 3993A>G変異の同定だった。筋生検が不必要となる分子生物学の威力を体験し、そこから研究を始めた。その子は、優秀な、小学校の生徒会長。自宅で中心静脈を導入し、お宅にもお邪魔した。それから30年遺伝性難病に関わり、Leigh脳症の患者さん家族に導かれるように再びミトコンドリア病の研究に戻ってきた。いろいろな分野の臨床医や研究者と知り合い、忘れ得ぬ時間を過ごし、創薬の最前線にも関わることができた。しかし”ベンチからベットサイド”の随分手前である、等々考えているうちにCT造影検査。体が熱い。その後に検査結果の説明である。心づもりを整えようとしていたが間に合わないまま、診察室から呼ばれた。気持ちも拍動も乱れている。やはり整理するにはあまりにも時間が少なすぎた。

思いがけず問題ないとの結論がくだされ、点滴も繋がらず普段の診療・研究に戻ることができた。諦めかけたミトコンドリア病の治療薬開発にも戻ることができたが、他の希少難病も含めやるべきことは山積している。早期診断・治療のシステムを作りたい。学会への機内で話題の”君の膵臓を食べたい(略称;キミスイ)”をみた。将来ある若い女の子の願いはあまりにも切ない。しかし大勢の心に大切なものがずっと残る。明日は何が起きるのか、誰もわからない、“いま”を精一杯生きよと、映画のメッセージ。私の膵臓は大丈夫だったようだ。ならば、この瞬間にも新しい希望の薬を望んでいる家族がいる、その声に答えねば。
きもちを共有する医師、研究者、家族と力を合わせてやっていこう。

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過日、オールジャパンミトコンドリア病患者家族会では、小坂先生に本当にお世話になりました。

第2部の、患者家族から寄せられた質問に答えるコーナーでは、お忙しい中ファシリテーターを務めていだき、事前の打ち合わせ段階では念入りに準備を、本番では心のこもった議事進行をしていただきました。
会の終了後も、当日取り上げきれなかった患者様の声に耳を傾け、てんかんでお困りの患者様に、zoomで個別にアドバイスをしてくださいました。

私がブログに書いた、メラスの次男が発症前の高校時代に釣り部所属だった話を読んでくださったのか、ご趣味の釣りの話もしてくださり、とても親近感を覚えました。
先生のお住まいは海なし県の栃木ですが、横浜に住んでおられたときには、城ケ島、江の島で、メジナや、アイナメ、時にカレイ、船でメバル、アジ、タチウオなど釣られておられたようで、その腕もなかなかのものです。我が次男も、私が先生の釣りのお話をすると、とても嬉しそうに聞いています。

ミトコンドリア病患者家族は、温かく寄り添ってくださる先生に救われます。その先生が病と向き合っていたり、辛い境遇を背負っていたりと、私達と同じ立ち位置であることを公にしてくださるということは、とても勇気のいることのように思います。わたしたちが、先生たちとキャッチボールができることも、わたしたちの幸せです。
オールジャパン患者会での先生のお姿も、アポモルフィンの開発も、病を乗り越えてのお仕事だと知ると、先生からのメッセージに、改めて先生の凛とした人となりを感じました。

 

 

みどりの会zoom患者家族会~小坂先生を囲んで~

 

オールジャパン患者家族会 ファシリテータ小坂仁先生

日に日に空が高くなり、秋風がよぎると、ちょっとメランコリックな気分になったりします。

季節の変わり目、気温、気圧の変化に体調管理も難しくなることですね。

そんな折、みんなでちょっと潤えるような、患者家族会の企画を、みどりの会スタッフで、立てています。

 

?11月3日(文化の日)水曜日
13時から15時まで

小坂仁先生を囲んでの患者家族交流会
参加人数:ミトコンドリア病患者家族15名程度.

締め切り10月20日水曜日。

※小坂先生への質問コメントがある方はお書き添えください。

問い合わせ himawarinotubu@gmail.com(みどりの会)

?090-7196-2751(みどりの会 伊藤千恵子)

 

小坂先生について

自治医科大学小児科学教授

「専門;小児神経学、ミトコンドリア病と遺伝子治療研究」

 

9月21日に行われましたオールジャパンミトコンドリア病患者家族会では、患者家族のと専門医との質疑応答のファシリテータを完璧に努めてくださり、常に患者家族の立場に寄り添ってくださいました。

終了後、小坂先生から「手作りなのに非常に念入りに準備されたいい会でしたね」と激励メールを受け取ったときは、ひたすらでした。その後、てんかんでお困りの患者様へのzoom会を、先生の方から提案して下さり、列席させていただいたときには、痙攣やてんかんというわかりにくい症状に対しての疑問が、ゆっくり解けていくようでした。先生のてんかんに対するアドバイスは、皆様とぜひシェアしたいと思い、今回の交流会の運びになりました。

内容?

?てんかんについて その症状や薬について

?アポモルフィンについて

?MA-5について  など

今の所、議題として、先生にお伺いしたい質問を前もってみなさんとご相談して決めていきたいと思っています。個々へのアドバイスが欲しい方は当日のzoom会で直接、質問される形にしたいと考えています。

よろしくおねがいします。

新生児期発症のミトコンドリア病の詳細について世界で初めて大規模報告

 

千葉こども病院村山圭先生

 

先日のオールジャパン患者家族会で、ファシリテーターを務めてくださった村山先生、患者家族の質問に真摯にお応えいただいた大竹先生たちのグループが、日本で出生した新生児期発症のミトコンドリア病1281症例を検討し、臨床的な特徴、遺伝子診断結果や予後についてまとめ、その研究結果を論文報告してくださいました!

今回の研究は新生児期発症のミトコンドリア病症例を大規模にまとめた、世界で初めての報告になります。
この報告によって新生児期に発症が多い重篤なミトコンドリア病の新たな病態解明と、病因遺伝子に基づく治療開発などミトコンドリア病研究の、さらなる発展が期待されます。

本研究成果は、新生児関連疾患に関する論文を広く取り扱う欧州の医学雑誌『Archives of Disease in Childhood Fetal & Neonatal edition』誌のオンライン版に令和3年10月8日付で公開されました。

詳細は 以下をご参照ください!

https://www.amed.go.jp/news/release_20211008-02.html?fbclid=IwAR1wmqAKxxV1O52lQv8QPd-HBK6zkq9PhBDSum9pXrp7r9aE9YlI65TtRFo

ミトコンドリア病におけるアルギニンの保険適応について 

 

2014年7月、次男龍は、17歳、高校野球応援と受験勉強で疲れている頃、夜中、目をむいて倒れている姿を発見。あわてて緊急搬送。偏頭痛と言われ、数時間すると、疲れてはいるものの、生活できるほどに戻っていました。しかし、何度も倒れていくうちに、事の重大さを知っていきます。

秋にはミトコンドリア病メラスと診断され、入院先の大学病院に、ネットで調べたアルギニン静注点滴の再三の要望にも、「保険適応外」の一つ返事で却下されました。その後、アルギニン点滴については、古賀先生、村山先生始め、たくさんの専門医からアドバイスを頂き、病院側に交渉した末の、発症から半年後、他の病気の検査薬として、自費(月8万円ほど)で入れてもらいました。しかし残念ながら、すでに龍の脳の高次機能は悪化しました。

龍は、2015年、合計半年の入院生活を経て退院して以降は、検査入院以外の大きな入院は有りません。退院後は、なんとか自宅療養をしたいと、必死になって不隠時のアルギニン点滴を自宅でやってもらえるルートをさがしました。

発症時から何度も倒れる龍の様子をはっきりと覚えていますから、いつもと違って、体と心の不穏状態が続くようなときは、本人からのアルギニン所望の意志を看護師と確認し、アルギU点滴静注20グラムを一回入れてもらいます。みどりの会の調査では、頭痛時に外来での一回の点滴で調子を戻したケースも有りました。急性期を過ぎた後の慢性期においても、アルギニン点滴を実際に入れてもらえると、本人が落ち着いて睡眠と栄養を取れ、生活のリズムが取り戻せるようになっています。

発病当初の苦い経験と、在宅療養におけるアルギニン静注点滴の実践を元に、同じ様に苦しむ患者様が全国どこでも平等に処方できるようにと、2020年春から、久留米大学医学部小児科古賀靖敏先生と、アルギニンの保険適応を求める活動をはじめました。古賀先生から送られた資料は莫大でした。

みどりの会でも呼びかけて、アルギニン点滴の実施状況、患者のその後の様子など何件かまとめさせてもらいました。しかしながら、厚労省の医薬品審査管理課、製薬会社などに当たり尽くしましたが、患者の声を親身に聞いてはもらえても、大きな組織の中では痛ましい声だけが、宙に舞っていました。

2021年6月国立成育医療研究センターの中村秀文先生から、厚生省保健局長通達「55年通知」の審議にかけるというお知恵をいただくことができました。

結果、古賀先生の多大な労力を元に、やっと、日本でもアルギニンの保険適応が叶う道がつながることになりました。

以下古賀先生より、皆様へお手紙です。

 

MELASに対するアルギニン治療の適応外使用は、日本では限られた施設で処方されています。アルギニン治療は、MELAS患者の脳卒中様発作急性期治療としての静注治療と、発作予防もしくは発作時の重症度を軽減するための内服治療により、MELASの長期予後を改善し、死亡率を軽減する事が、治験参加症例の9年間のフォローアップ研究で明らかになっています(J Neurology 2018)。静注および内服の2つの治療は、何れもMELASの生活の質の向上に必須の組み合わせであり、ミトコンドリア病の治療薬剤として、国際的な専門学会(Mitochondrial Medicine Society)から治療推奨薬剤として位置づけられています(Genet Med. 2017)。欧米では、ミトコンドリア病の診断がついた場合、全例に使用されている一般的薬剤となっています。

 

日本では、アルギニン処方は、適用外使用であり、全国どこでも処方できる訳ではありません。MELASに対するアルギニン治療の提唱者である久留米大学医学部小児科古賀靖敏は、アルギニン治療が欧米と同様に、日本全国どこでも使用できるように申請書を提出中です。救済措置として、厚生省保健局長通達「55年通知」を利用し、アルギニン処方を公知の事実として、保険適応として全国で扱えるように国に申請中です(2021年9月11日現在)。今後、日本小児科学会の薬事審査員会(2021年10月)、その後に厚生労働省医薬審査課、支払基金審査会で審議の上(2022年1月)、うまくいけば2022年4月から全国で処方できる見通しです。

 

患者家族会の皆様には、今しばらくご不便をおかけする事になると思いますが、どうぞよろしくお願いします。

GDF15   PMDA承認について

古賀靖敏先生からの嬉しいお知らせが届きました。
かねてより田中雅嗣先生と共同研究で開発していましたGDF15のミトコンドリア病診断薬としての承認がPMDAからおりました
医学生物学研究所と共同開発した新しいデバイス「MEBLIAスト GDF15」は、全国の病院で使用される汎用自動分析機に搭載可能で、0.2mlの血清で測定時間10分、感度・特異度92%以上の性能を誇ります。また、1時間で約1000検体の連続測定が可能となり、ミトコンドリア病遺伝子検査前の診断に大きな力を発揮します。
 世界のミトコンドリア病診断アルゴリズムを大きく変える「トランスレーショナルリサーチ」の成功例となります。
新しいデバイスの論文は、添付します。
この研究により、ミトコンドリア病の診断が10分で出来、患者の早期発見、早期治療が可能となります。

 

jimd.12317 (Koga)

ライトアップ記念日  You’ll Never Walk Alone!

 

IMP(International Mito Patients)というミトコンドリア病の国際組織は、国境を超え、患者のサポートや資金集めなどを活発に行っている組織です。
この組織が、ミトコンドリア病週間に世界の様々な場所をみどり色にライトアップすることで、ミトコンドリア病の周知啓発運動を推進しようとしています。
オーストラリアのミトコンドリア病患者組織「Mito Foundation」のフレザー佳奈さんの呼びかけも有り、MCMの世話人山田源太郎さんが横浜市に掛け合い、横浜市開港記念会館を、
9月24日から27日までライトアップする運びとなりました。

山田さんが一生懸命に働きかけたライトアップも、素晴らしいつながりになりました。
みどりの会zoom室は、山積みの残務整理もそこそこに、やや不安でしたがメラスの息子龍を連れて、ライトアップの光景を見に横浜開港記念会館まででかけました。

龍の誕生日間近。発症から8年目。25歳の記念すべきライトアップ。騒音や人混みも不安です。
開港記念会館は、海の近くなので開放感もありそう?という予想に反して、横浜の中心地。車が四方から飛び交う交差点の一角でした。
龍は去年から精神症状が悪化していて、新しく馴染みのない環境に対して、ひどく緊張するようになりました。
自分がどう見られているのか。
慣れない場所で、車の騒音も、人混みも大の苦手。
案の定、不穏になって路上で寝転び、頑なに移動を拒否する龍と、その龍を移動させようとする母は、警官からの尋問にあいました。

焦りまくりましたが、おまわりさんに、「開港記念会館がミトコンドリア病の周知理解のため、ライトアップされ、皆で記念して集まったんです」と、咄嗟に出た言葉が周知啓発できたか?血迷った親子をかばうように、遠路足をお運びくださった後藤先生と村山先生も、「専門医も一緒ですから大丈夫」とお話くださいました。
おまわりさんからは「勉強不足で申し訳ない」と言っていただき、「撮影させてもらいます」と、さらにライトアップの前にならぶミトコンドリア病関係者たちの素敵な写真を撮っていただきました。

それから、皆さん、三々五々別れたのですが、残って私達親子を見守る山田さん。じっと龍の話に耳を傾けてくれるその眼差しに、吸い寄せられるように龍は山田さんに近づきました。(正気な目でゆっくり起き上がり、足元もしっかりと。)

「龍と同じミトコンドリア病の仲間だね。ひとりじゃない。友達。」

龍と山田さんは自然に握手を交わし見つめ合いました。
しばらく静寂の中、ライトアップを前に繋がったミトコンドリア病の友情に、私も龍の弟も感激で時間が止まりました。緊張感が一気に流れを豊かにし、温かい灯火が私達の周りを包みました。
改めて、病は辛い。だけど必ずそこには希望の道が繋がれる。
先生や患者家族みなさまにに助けられるーそう思いながら、私達にとっても大事な意味を持つライトアップ記念日でした。

You’ll Never Walk Alone!(村山先生から送られた言葉)

※写真は、2人の専門医、後藤先生と村山先生。村山先生の奥さんとお子さん2人。その周りに、患者会のみなさんも並びました。(寝転んでいるのが、龍です^^;)