田中雅嗣先生勉強会&交流会 報告

 

田中雅嗣先生勉強会&交流会
2023年7月29日
「ミトコンドリアと私」

報告が遅くなり申し訳ありません。

あまりにもたくさんの情報と知恵とユーモアを頂き、どうやったらまとめられるかと思案いたしておりました。
当日使用したパワーポイントは著作権の問題があり、ブログでの公開は避けたほうが良いということで、概略にはなってしまいますが、ここでまとめさせていただきます。

 

ミトコンドリア病研究フォーラムなどでの田中雅嗣先生の講演はいつも難しくて、理解のついていけない私は目がくるくるでしたが、今回の勉強会では、前もって「患者家族の悩ましい生活に根ざしたような研究からの洞察」ということでお話をお願いいたしました。

先生も「ミトコンドリアと私」というテーマで自由にお話しいただき、色んな角度からのお話でとてもわかり易く、先生の熱意が伝わる「命のレポート」のように感じました。

参加者からも「患者の症状の不可解なモヤモヤや迷いが、田中先生の講義で整理されて、これからの生活にもすごく支えになる思いです。」とコメントを頂きました。

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勉強会の内容をごくかいつまんで説明させていただきます

まずは、(先生の)ご両親の進行した喉頭癌や広範な脳梗塞に出会った経験から、 医学の限界を感じつつ、「如何に生きていくか」という思いを胸に基礎研究を始められたというお話から始まりました。

続いて

1️⃣体の中でどのような形でエネルギーが作られるのか・・

2️⃣乳酸アシドーシスから命の守るためにはどのようにしたらよいのか・・・

3️⃣ミトコンドリア病の治療について

4️⃣ミトコンドリア病では使用を避けるべき薬について

5️⃣ミトコンドリア病に良い生活

6️⃣今後の田中雅嗣先生研究の断片

7️⃣参加者皆様との質疑応答

 

以下、概略ではありますが、項目ごとにまとめてみます。

1️⃣体の中でどのような形でエネルギーが作られるのか・・

1)私達人間は、(エネルギーの元である)ATPを増やすためには、解糖系で作るか、ミトコンドリアで作るしかない。

瞬発力が必要なときは、解糖系を使ってATPを作る。
持続的なエネルギーは、ミトコンドリアで、酸素を使って長時間有効なエネルギーを作る。

2)我々人間の筋肉は白筋と赤筋とからなり、お互いにやりとりをする

白筋:ミトコンドリアはあまりいない。解糖系が主で、乳酸を作る → 瞬発力を司る
赤筋:ミトコンドリアがたくさんいる。ピルビン酸に変換して代謝 → ゆらゆらうごく → 長時間有効なエネルギーをつくる

 

2️⃣乳酸アシドーシスから命の守るためにはどのようにしたらよいのか・・・
何を与えたら乳酸アシドーシス状態から命を守ることができるか。乳酸ができるとどうなるのか。)

1)乳酸を中和してタンパク質が動けるようにする

2)酸素を取り入れながらゆっくり走る。そのときには(解糖系ではなく)ミトコンドリアが活躍するので乳酸が出来にくい。

3)体が酸性に傾くと正常の生活ができなくなる。意識障害などがおきてしまう。

4)ピルビン酸を入れることによりエネルギーが作られる(と考えられる)

5)乳酸はどのように使われるか。
人間の筋肉は白筋と赤筋が混じっている。
お互い近くにいて、白い筋肉が乳酸を作ると赤い筋肉に渡すというやり取りがある。


質問:
メラスの息子が、例えば、入浴後の疲れが出ているときなど、動けなくなり口がカクカクして涎が出ているようなときは、どのようなことが体に起きているのか・・・

答え:
脳がエネルギー不足に陥ると神経活動が低下する。即ち意識消失が起こっているのだと考えられる。

体の中の代謝を想像してみよう!
体の中では乳酸を作る細胞と代謝する細胞が別々に存在する。

●酸素を供給しつつ、深部熱を下げるなどして様子を見る。しばらくして落ち着けばよい。

脳の神経細胞とグリア細胞の物質代謝のアンバランスが痙攣を起こす。
痙攣やてんかんは抑えないとミトコンドリアには良くないので抑える薬を医師に処方してもらう。

●錯乱・意識障害・幻覚・せん妄などの様々な精神症状の発生時、神経興奮が起き、エネルギーがたくさん使われてしまう。
乳酸が作られ、ミトコンドリアは大忙しになるので、それを抑える本人の症状に見合った抗精神薬が必要である。


質問:
体内でエネルギーが作られる時、酸素はどのように使われるか?

答え:
ゆっくりした運動は赤筋が働いて、酸素を徐々に使う。
運動の強度を上げると白筋が働き、乳酸が出てくる。
血中乳酸濃度が急増する領域を「乳酸閾値」という。

熟練したマラソン選手は、乳酸がたまらないようにミトコンドリアをうまく使う(乳酸閾値を超えないギリギリの線で走る)
そうすると持久力がついてくる。

一般にミトコンドリアが元気に働くために早歩きが推奨されるが、ミトコンドリア病の患者では往々にして乳酸が増える。
(ミトコンドリアの活性が弱い人は、軽い運動でも乳酸が上昇する)

ミトコンドリアの機能が低下した人は歩くくらいでも乳酸が上がる
なので、
・感染症に注意する(高熱に弱いから)
・興奮しすぎないことが重要。
・そのひとに合わせた軽い運動をおこなう。(乳酸閾値を超えない範囲を見定める事が重要)

 

3️⃣ミトコンドリア病の治療について

●脳筋症の治療

1)脳の血管に酸素を送る血管が、一酸化窒素が足りないことによって平滑筋が収縮し、血管攣縮を起こしてしまう。これが「脳卒中様発作」である。

内皮のところで一酸化窒素を生み出すと、平滑筋が広がって酸素が取り入れられる。
アルギニン点滴はこれを狙った治療法である。

2)コハク酸ナトリウムを取るとミトコンドリアが元気になる
まだ仮説の段階であるが、細胞の中でエネルギーが足りなくなって「コハク酸」がいっぱいたまったときに、他の細胞に情報伝達をしていると言われている。
「白筋が少なくなって赤筋が増える。しかし変異したミトコンドリアが増えずに良いミトコンドリアが増えればいいなあ…ということ」(先生談)

3)ピルビン酸ナトリウムは、メラスなどでは複合体Ⅰの活性がなくなるので、ピルビン酸を入れることで元気になる。

 

4️⃣ミトコンドリアに避けたい薬品 (詳細については省略)

バルプロ酸

アミノグリコシド系抗生物質

【12S rRNA遺伝子に特異的な点変異(例:m.1555A>G)を有する人は投与を避ける】

ビグアナイド系糖尿病薬

ニューキノロン系抗菌薬

などの中にも避けたい薬があるようです。

 

5️⃣ミトコンドリア病に良い日常生活

過労を避ける

十分な休養と睡眠

バランス良い食生活

サプリメントの過剰摂取に気をつける

適度な有酸素運動

感染症など、発熱に気をつける

 

6️⃣今後の田中雅嗣先生研究の断片

田中雅嗣式独自の、尿への乳酸排出薬の開発を考えたり、コハク酸ナトリウムの効果についても今後も研究してゆきたいとのことです。先生の探求はバランスを持って続けられるものと信じています。

 

7️⃣参加者皆様との質疑応答

2部では患者家族の質問にお答えする形で、丁寧にご返答くださいました。

長野県立こども病院 神経小児科 本林光雄先生も参戦してくださり、その都度的確なご回答を賜り、大感謝。ありがとうございます。

最後に
田中雅嗣先生のお話をまとめさせていただき、今回の講義はミトコンドリアへの愛、そしてミトコンドリアを患う患者家族への愛に満ち溢れていたお話であったと再確信しました。

田中雅嗣先生へ感謝の気持をもって結びの言葉とします。

2023年8月14日
みどりの会代表 伊藤千恵子

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