先生たちからのメッセージ3 大竹先生ミトコンドリア病の診断と治療:今昔

去年のフォーラムで、大竹先生の5-アミノレブリン酸の講義をお聞きしました。

先生の厳粛な講義の最後に目の悪い猫ちゃんが登場して、

「病気を持つ猫がいとおしい」と、締めくくられました。

研究の厳しいお顔の向こうに秘めるやさしいまなざしを見た時に、ー病に出会ったからこそ、触れ合える優しさーと、だいじにに心にしまいました。

このホームページのメニューぬくもりの部屋に大竹先生んちの猫ちゃんのコーナーがあります。

是非この記事のあと、立ち寄ってください。

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ミトコンドリア病の診断と治療:今昔
埼玉医科大学病院 小児科/ゲノム医療科 大竹 明

 

2020年4月始め現在、私たちの手元には2620家系4119名にのぼる方々からの6935検体がございます。まずは一重にご協力頂いた患者さん・ご家族、そして主治医の先生方のご協力に感謝いたします。

思い出すのは第1番の患者さんです。出生前から脳室拡大を認め生後すぐに強い高乳酸血症を来たし、当時有効とされていたジクロル酢酸ナトリウムやビタミンB1等の使用も効果なく生後3か月あまりで死亡されました。姉も同様症状で生後すぐに亡くなっておられました。翌年私はメルボルンLa Trobe大学のMike Ryan先生の下に留学し、Royal Children’s HospitalのDavid Thorburn先生の助けも借り、この患者さんの解析を行わせていただきました。

結果は図1a, 1bに示す通りで、呼吸鎖Iの量・大きさは対照と差を認めませんでしたが、活性が綺麗に低下しており、呼吸鎖I異常症との診断が確定しました。これが日本で最初の新生児・乳児ミトコンドリア病ではないかと思います。

図1b.呼吸鎖酵素活性測定結果.
Pt: 患者、SDH: クエン酸脱水素酵素

私の帰国後、千葉県こども病院の村山圭先生が続いてメルボルンへ留学し呼吸鎖酵素アッセイ法を習得して帰国され、さらにその後ミュンヘンのHolger Prokisch先生の教えも受け、現在は順天堂の岡﨑康司先生を始めとする多くの研究者の皆様との共同で、年間1000例に達する依頼患者さんの解析をこなしております。
私たち臨床医の究極目標は治療法の開発です。日本の研究はかなり進んでおり、私の行っている5-アミノレブリン酸を始め、国内で開発されつつある新薬の多くは、外国からも引く手数多となっていることを申し上げておきます。

そして最後に強調したいことは、患者会や各NPO団体の方々との協力です。患者登録制度は、病態解明に加え新薬治験の参加者を募るためにも一刻も早い整備が必要です。
私もまもなく定年の年を迎えますが、多方面の方々(写真)と協力し、今後も患者登録と治験を中心に、まだまだ頑張って参りたいと思います。

皆様と力を合わせ、未来が明るいことを信じて、このコロナの難局を乗り切りましょう。

資料

図1a1b.呼吸鎖酵素活性測定結果.
Pt: 患者、SDH: クエン酸脱水素酵素