2026ミトコンドリアみどりの会親睦会 報告その2

 

ミトコンドリアみどりの会親睦会7月4日土曜日は、前半13時から17時まで 田中雅嗣先生の講義、三牧正和先生の講義、患者家族の質疑応答を休憩を挟みながら行いました。

それぞれを少しまとめてみました。

◆田中雅嗣先生の講義

1ピルビン酸ナトリウムの治験と課題

ミトコンドリア病の治療薬としてピルビン酸ナトリウムを提案し、国からの予算を得て、非常に純度の高いピルビン酸を製造して動物実験や健康な人、患者さんへの試験を行いました。治験の結果:は薬として認められるためには「数値として統計的に良くなること」を証明しなければなりませんが、ミトコンドリア病の患者さんは風邪や発熱などの体調変動が大きく、その変動がピルビン酸の効果を上回ってしまい、有効性を証明するのが難しかった。

バイオマーカー「GDF15」の発見と応用

診断をより正確にするために提唱されたのが、新しい血液指標(バイオマーカー)であるGDF15。メラス患者の細胞を用いた実験で、乳酸を入れると数値が上がり、ピルビン酸を入れると数値が下がる遺伝子として見つかりました。が、現在医療現場での普及には至っていないのが現状。しかし、GDF15は胎盤で作られ「つわり」の原因にもなるタンパク質で、海外(ファイザー社など)では、GDF15の働きを抑えることで、癌患者などの食欲不振(悪液質)を改善する「ポンセグロマブ」という抗体医薬の治験が進められている。
3. 遺伝子治療の最前線と壁
ミトコンドリアDNA(mtDNA)の異常を直接治す研究については異常なDNAだけを認識して切り取る「制限酵素(Smalなど)」を用い、切断された不安定な異常DNAを細胞に分解させるという手法で、2002年に細胞レベルで証明したが、技術的にも経済的にもハードルが高く人間への応用は今は難しい。
田中先生は遺伝子治療などの基礎研究が進む一方で、それらが実用化されるまでの間も、「生活の不都合をなくすための努力」が患者さんの支えになると、温かなエールを送られました。
三牧正和先生の講義
1. ミトコンドリア病の基礎:2つの設計図の共同作業
ミトコンドリアは細胞内でネットワークを形成しており、その中には独自の「ミトコンドリアDNA」が存在しますエネルギーを作る「呼吸鎖複合体」は巨大な積み木のような構造で、「核のDNA」と「ミトコンドリアDNA」の両方の設計図をもとに作られたタンパク質が協力して働いていますそのため、どちらの遺伝子に異常があっても病気になります。母系遺伝だけでなく、常染色体潜性(劣性)遺伝など、あらゆる遺伝形式が考えられるのがこの病気の複雑さです
2. 疾患の特徴と画像診断
小児期の大部分は 核遺伝子の異常によるものが多く、成人はミトコンドリアDNAの異常によるものが多い傾向があります
リー脳症は脳の深い部分(基底核や脳幹)にダメージを受け、画像上ではその部分がむくんだり(浮腫)、壊死して水に置き換わったりする様子が見られます
メラスは特徴的な「脳卒中様発作」が診断の鍵。通常の脳梗塞とは異なり、血管の支配領域をまたいで広がる。これは、エネルギー不足による神経細胞の興奮や異常が、隣接する細胞へと次々に伝わっていく(Spread)という特殊な病態によるものです
3. 遺伝についての新しい捉え方:「多様性」と「共生」
三牧先生が特に強調されたのが、遺伝を「血筋」や「引き継ぐ病気」としてのみ捉えることへの是正です。
遺伝学の本質は、親から子への継承だけではなく、個々の「多様性(バリエーション)」を扱う学問であると述べています
人類は誰でも4つや5つは大事な遺伝子に変異を持っており、「全員が何らかの病気の保因者である」という視点を持つことが、障害や病気に対する豊かな捉え方に繋がると説いています
4. 診断から「治療の時代」へのブレイクスルー
これまでの20年で、遺伝子診断の技術は飛躍的に進歩しました。
 1つ1つ遺伝子を調べる時代から、次世代シーケンサーなどで一気に読み解く時代になり、診断の精度が上がっています
すでに脊髄性筋萎縮症(SMA)などの核遺伝子疾患では、数億円規模の遺伝子治療が臨床実装されています
ミトコンドリア病の治療薬開発(MA-5など)や遺伝子治療の研究も進んでおり、三牧先生は若い医師たちに向け、「これからの20年で必ずブレイクスルーが起きる」と強い期待を込めて語られました
三牧先生の話は、医学的なメカニズムの解説にとどまらず、患者さんが社会の中でどのように自分たちの特性を捉え、希望を持って生きていくかという精神的なサポートにも通じる内容でした。
◆患者家族の質疑応答
メラスの一例
成人発症、経過等の機序がわからず、混迷している患者家族が多いことを掲げ、患者の発作の動画や個人のMRI画像、血液検査の結果等を皆さんで共有して頂きました。
日常の発作が脳梗塞様発作につながるかどうかの見極め
患者家族がどのように生活を整えていくべきか・・・
医師は画像や動画から脳の傷や機能低下の場所を特定しつつ、それがメラス特有のエネルギー代謝の破綻(代謝性危機)から来ていることなどの説明をしてくださり、医学的治療と生活の質(QOL)の両面からのアプローチを提案してくださいました。
動画や画像の共有は、単なるデータ確認ではなく、日々奮闘する家族の確かな観察眼を、専門医が医学的に裏付けていく、共同作業のような時間でした。
医学的な治療を尽くした先にある「心の活性化(QOL)」が、ミトコンドリアの元気を引き出す大きな力になるという力強いエールをいただきました。
個人情報もありますので、こちらの詳細は、みどりの会親睦会参加者の報告文としての伝達に限らせていただきます)

2026ミトコンドリアみどりの会親睦会 報告その1

また会いたい――そんな気持ちがあふれた一日でした。

7月4日、「2026ミトコンドリアみどりの会親睦会」を無事に開催することができました。

参加者 24名(うちスタッフ3名)

北は北海道、南は岡山まで。
患者さん、ご家族が、それぞれに大変な事情を抱えながらも、全国各地から集まってくださいました。そのことが何よりもうれしく、感謝の気持ちでいっぱいです。

皆さんのお顔を見た瞬間、これまで茶話会でオンライン越しに重ねてきた語り合いの日々が、次々と思い出されました。画面越しでも心は通いますが、やはり直接お会いできる喜びは、何ものにも代えがたいものがあります。

到着後まもなく、田中雅嗣先生、三牧正和先生にご講話いただきました。

(講話についてのまとめは、時間を要するので報告2に示しますね。)

講演の後、患者や家族一人ひとりの声に丁寧に耳を傾け、同じ目線で語り合ってくださる先生方の温かさに、会場は終始和やかな雰囲気に包まれました。

夕方5時からほんわかディナー

会場のテーブルには、全国から持ち寄ってくださった特産品やお菓子がずらりと並び、美味しいワインや梅酒、チーズ、オードブルも加わって、お腹も心も満たされる温かな時間となりました。

「今回は参加できないけれど、ぜひ皆さんで召し上がってください。」そんなお気持ちを添えて品物を送ってくださった方もいらっしゃり、その優しさまで皆さんで味わうことができた、本当に心温まるディナーでした。

ミトコンドリアに優しい手料理を準備し、スタッフが直前仕上げをしてくれました。ズッキーニのクリームチーズカナッペ サーモンと彩り野菜レモンバターがけ、角煮、塩麹ささみ、各種サラダ等

癒やしのコーナーでは、重曹とクエン酸をベースに乾燥オレンジを散りばめた「ミトコンドリア活性のための炭酸バスボム」と、フレッシュミントを使った手湯をご用意しました。フォークソングの優しい歌声も響き、笑顔あふれる穏やかな時間が流れていました。

帰り際、三牧先生は、「ミトコンドリア病のような希少疾病ほど、患者会が大切だから、一緒に頑張ろう!」と力強い言葉をかけてくださいました。その一言は、私たちの心に深く刻まれています。

 

田中先生も宿泊された皆さんと夜遅くまで語り合い、講演会では聞くことのできないような貴重なお話や笑顔があふれ、その温かな交流は翌日まで続きました。

参加されたご家族からは、

「親睦会は私のリフレッシュになりました。」
「今日からのエネルギーになりました。」といううれしい感想も寄せられました。

この一日のために、何日も前から打ち合わせを重ね、準備や掃除、お料理、宿泊の支度まで力を尽くしてくださったスタッフの皆さまにも、心より感謝申し上げます。

夜、寝る前に患者さんの身体にそっと触れながら、

「一生懸命生きてきた身体なんだ。」

そう感じたし、そこに患者会の学びがありました。

病気は一人ひとり違います。
けれど、その身体には、それぞれの人生が刻まれています。

 

今回の親睦会で改めて感じたのは、医学の進歩はもちろん大切ですが、それと同じくらい、人と人とのつながりが生きる力になるということでした。

そして旅立った仲間たちも、お写真を通して私たちと一緒にこの時間を過ごしてくれました。思い出すことは、その命を今も大切に生き続けること。そして、その人生から学び続けることなのだと思います。

皆さんがお帰りになったあと、ひまわりの家は静けさに包まれました。

会場に飾られたひまわりが、まるで「また会いましょう」と語りかけてくれているようで、その姿に癒やされながら後片付けをしました。

また皆さんと笑顔で再会できる日を心から楽しみにしています。

本当にありがとうございました。