2024年 精神症状について

 

 

ミトコンドリア病の患者すべてが精神症状の悪化を呈するわけではないことを前提に、以下の文章を書いています。ご了承ください。

我が家のメラス患者次男の龍の経緯

1996年生まれ。
生き物大好き❤ 普通に生活。

龍小学生        弟と四十八瀬川で

高校では釣り部に所属。青春を謳歌している真っ只中の2014年、17才のとき脳梗塞様発作メラスを発症。
一時は寝たきりでしたが、家で暮らせるようになりました。

難聴、視覚障害、運動機能低下、内臓疾患、易疲労、コミュニケーション不能など、様々な症状が起こりますが、通所に通いながら、毎日生き物の絵を描く、週末は釣りに行くという生活を続けます。

2022年 脳梗塞様発作 再発。

全失行/全介助。胃ろう造設。
もともとあった高次機能障害、認知症、精神障害がひどくなり、ときに脳の嵐が起きては自制できずに暴れる日々。
医師からも「介護施設か精神病院に入るしかない」と言われました。

一方的な言い方ですが「精神薬漬け、拘束」も受け入れなくてはいけない世界です。突然おきた闘病生活。それは家族が倒れないために必要な手段でもあります。

主治医のいる国立の研究病院では、10年前の発症当時からずっと龍を診ていただいていますので、医師と家族の意思疎通はある程度まではできていると思います。

時に脳の嵐が起きてしまう龍は、病棟でも、多動・パニック・粗暴も起こしかねず、大切な医療に支障をきたすようなことも起こりかねません。
故にレスパイト検査入院においても、高柵ベッドの必要を説かれ、話し合いの中で、本人の様子を見て、穏やかなときは扉を開ける、寝る時間だけカギをかける等々、色々考慮していただきました。

高柵ベットについては入院の度に心を痛めていましたが、この8月、重度訪問ヘルパーさんが初めて龍の入院中に国立の病院に出向いてくださることになりました。
このヘルパーさんは、いつも自宅で龍の介護をしてくださる方なのですが、龍に介護者目線で接するのではなく、「友達」と言って接してくれます。

彼の介護のポリシーは、「赤ちゃん扱いもしない、本人の存在を無視せず、とにかく仲間として受け入れてもらう」ということです。

国立研究センターで普通に使用している高柵ベットについても、

「これがほんとに龍くんに必要?」

と疑問を抱いてくれて、医師に対して

「龍くんに必要なものは、美味しい飲み物と、美味しいご飯と、楽しい時間! そして気持ち良い空間!」と明言。
床に布団を敷いて、二人でゴロゴロして、龍をずっと看続けてきた看護婦さんも先生に提案してくれて、病棟の医師も承諾! 高柵ベットは撤去となったのであります。

この事実を聞いた時に、心から拍手!そして涙。
そして、自分がこれからやるべきことは、ミトコンドリア病患者の生きる道を、少しでも繋げていくことだと思いました。

極めて多彩な様相を呈するミトコンドリア病の精神/神経症状についての研究や理解が深まることは、類似する様々な精神/神経病の研究を促すものであると確信しています。

「社会の中で最も弱い立場にある人と、社会を繋げていくこと。」

患者の生活を支えること、患者の人生を受け入れることが、医療現場でも、介護現場でも、大切なことであると思います。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

以前、ブログに書いたものも大切だと思いましたので、ここに再掲します。

ミトコンドリア病と精神症状

メラスに限らずに、成人発症ですと、中途障害の苦しみを本人が味わって生活をしなくてはいけません。
出来ていて出来なくなったことの記憶が、前に進むことを阻むこともあります。

ミトコンドリア病の精神/神経症状は多彩で複雑です。なぜなら全身の細胞内にあるミトコンドリアの変異で、体の様々な部分に影響がでるからです。体と心はつながっていますから、それが様々な精神症状を引き起こします。

息子の場合は、大好きな友達にも会えなくなり、絵を書くこともできなくなると、思い詰め、なぜこんなふうになったんだとばかりに、自分の体を突いてみるなどの自傷が始まり、ついには他傷も始まり、物損被害も出てきます。

今お世話になっている横浜の精神科医は、発症当時の息子の様子を見ていますから、かなり進行が進み、精神症状が不安定になったことにも理解を示し、精神剤の見直しを積極的に行ってくれています。そしててんかん薬と精神障がいの関係についても説明をしてくれます。

ミトコンドリア病の痙攣について

一般的なてんかんと違って、意識が薄くなって起こる痙攣は 多くの場合エネルギーが落ちて起きた症状なので、その場合はしばらくエネルギーが補充されるのを待ってみるべきで、むやみにてんかんの薬を増やすべきではないのではないかと言う見解です。

興奮が収まらない日が続く場合は、今飲んでいる精神剤を少し増やして様子を見る。興奮が落ち着けば薬の量を元に戻す。

エネルギーが落ちる状態についても説明してくださいます。

精神科の診察は(龍抜きの)母のみですが、30分以上お話してくださり、安心感で包まれます。

ミトコンドリア病については、ミトコンドリアの変異が体の色々な部位に色々な症状を起こすので、今の精神状態が認知から起こるものなのか、高次機能障害によるものなのか、癲癇症状によるものなのか、脳の病変によるものなのか、各臓器の異常によるものなのか、(それぞれが複雑に絡み合っているのだとは思いますが)、判別することが難しい。

繰り返される症状も、日によって違ったり、月ごと、季節ごと、年令によって? 出来事によって? 様々に変わっていくもののようで、掴みどころがありません。
それぞれの精神症状について相談できる医師が少なかったりして、家族は戸惑ってしまうことが多いと思います。

病院の外来も数分で処理される事が多く、それぞれの生活をしっかり把握してもらいたいと思っている方も多いのではないでしょうか。

話を聞いてもらえる仲間や相談できる支援の方が周りにたくさんいると良いと思います。

みどりの会の茶話会に、参加したい方はご連絡ください。

2022midorinokai@gmail.com 伊藤千恵子