ミトコンドリア病(COXPD7)発症メカニズムの解明に期待 [投稿日] 2021/03/19

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    別井

    真菌における新規の抗生物質耐性機構の発見 ~ミトコンドリア病(COXPD7)発症メカニズムの解明に期待~

    出典:https://www.gunma-u.ac.jp/information/89471
    群馬大学大学院理工学府 分子科学部門 行木信一准教授の研究グループは、出芽酵母を用いて、抗生物質がミトコンドリアにおける翻訳過程を阻害したとき、翻訳停滞解消因子の一つPth3タンパク質が特異的にその阻害を解消することを世界で初めて示しました。これは、真菌における新規の抗生物質耐性機構と考えることができます。さらにこのPth3のヒトのホモログはC12orf65タンパク質と呼ばれ、ヒトでそのタンパク質が正常に発現されないと、ミトコンドリア病(COXPD7: 脳筋症、Leigh症候群、痙性対麻痺などの病態を示す)を発症することが知られています。この発見をきっかけに、ミトコンドリア病の発症メカニズムの解明やC12orf65の機能解析が進むことが期待されます。第一著者は、本学理工学府修士課程の星野総一郎氏で、実験のほとんどは本学で行われました。また、この研究は、群馬大学未来先端研究機構・生体調節研究所 髙稲正勝助教、弘前大学 姫野俵太教授・栗田大輔准教授および大阪大学 渡邉正勝准教授との共同研究です。この研究成果は、2021年3月8日(月)にNature Researchが提供するオープンアクセス・ジャーナル「Communications Biology」に掲載されました。

    概要
    リボソームによる翻訳(タンパク質合成)は、さまざまな理由によりmRNA上で滞る(翻訳停滞)。この停滞を解消できないとリボソームが再利用できなくなり、細胞に致死的影響を及ぼすことが知られている。これを解消しているのが「翻訳停滞解消因子」である。多くの細菌やオルガネラにおいて、翻訳停滞解消因子は2種類以上存在するとされるが、なぜ異なる種類が必要なのか、つまりその機能の相違点や役割分担はこれまで不明であった。
    本研究では、出芽酵母におけるミトコンドリアの翻訳系の2つの翻訳停滞解消因子Pth4およびPth3の機能解析を行った。
    非ストレス下では、Pth4とPth3には機能の大きな重複性があることが示された。
    しかし、リボソーム結合性抗生物質存在下では、Pth4ではなくPth3が増殖には必須であった。これは、Pth3が抗生物質のリボソームへの結合によって生じる翻訳停滞を解消していることを示している。このとき、Pth3の解消能は、抗生物質の種類つまりリボソームを停滞させる作用機序によらない。この結果は、2つの翻訳停滞解消因子の機能の相違点を明確にした初めての例である。
    Pth3のヒトのホモログはC12orf65タンパク質と呼ばれ、遺伝子の変異によりこのタンパク質が正常に発現されないと、ミトコンドリア病(COXPD7: 脳筋症、Leigh症候群、痙性対麻痺など)を発症することが知られている。この発見をきっかけに、ミトコンドリア病(COXPD7)の発症メカニズムの解明やC12orf65タンパク質の機能解析が進むことが期待される。
    論文
    Soichiro Hoshino, Ryohei Kanemura, Daisuke Kurita, Yukihiro Soutome, Hyouta Himeno, Masak Takaine, Masakatsu Watanabe, and Nobukazu Nameki. (2021).
    A stalled-ribosome rescue factor Pth3 is required for mitochondrial translation against antibiotics in Saccharomyces cerevisiae.
    Communications Biology 4, 300.
    DOI:https://doi.org/10.1038/s42003-021-01835-6
    Communication Biology
    Pubmed
    プレスリリース
    真菌における新規の抗生物質耐性機構の発見 ~ミトコンドリア病(COXPD7)発症メカニズムの解明に期待~

    関連リンク
    群馬大学大学院理工学府
    行木研究室
    本件に関するお問合せ先
    群馬大学大学院理工学府 准教授 行木信一
    E-MAIL:nameki@gunma-u.ac.jp

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