小坂仁先生の ミトコンドリア病治療薬の創薬に関するお話

皆様お待たせいたしました。

祝11月3日水曜日に開催いたしました「小坂仁先生を囲んで。オンラインみどりの会」では、先生よりミトコンドリア病治療薬の創薬に関する大変貴重なお話をいただきました。改めて、先生の実直な研究姿勢を感じ、感謝の気持でいっぱいです。

本日は、そのお話のレポートをお送りいたします。皆様の参考になれば幸いです。

(もし内容に誤りがありましたらお知らせください、訂正いたします。よろしくお願いいたします。)

 

小坂先生の ミトコンドリア病治療薬の創薬に関するお話

 

ミトコンドリア病の承認薬は、現在2種類しかない
イデベノン (ヨーロッパで承認されている。レーバー病という視力が落ちるミトコンドリア病限定のお薬)
タウリン  (川崎医科大学が中心になって承認を受ける。「MELASにおける脳卒中様発作の抑制」に効果)

ミトコンドリア病とは
狭義: 呼吸鎖複合体での異常
広義: 呼吸鎖複合体が正常に働くためには、ミトコンドリアにきちんと材料が運ばれないといけないし、老廃物が外に出ないといけない。呼吸鎖複合体の住まいであるミトコンドリア自体の健康が損なわれたときもミトコンドリア病という。

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QMA5について教えて下さい

編集者注
(東邦大学理学部生物学科のHPより抜粋)
ミトコンドリアは、その内膜上にある呼吸鎖複合体において、酸化還元反応を利用したエネルギー代謝により、ATPを産生しています。具体的には、複合体 I ではNADH、複合体 IIではコハク酸をそれぞれ酸化することで、ユビキノン(CoQ10)を還元してユビキノールにし、複合体 IIIでユビキノールを酸化することでシトクロムc(cyt c)を還元します。複合体IVでシトクロムcが酸化され、酸素分子に電子を伝達することで水に還元します。この過程でミトコンドリア内膜を隔ててH+勾配が生じ、このH+勾配を駆動力としてATPを合成します。』
以上編集者のまとめ

A:ミトコンドリアの呼吸鎖の5番(電子伝達系の5番)は 昔の自転車に付いていた発電器(ダイナモ)と似ています。ダイナモがくるくる回転しながら(発電して)光を作るように、ミトコンドリアの中で回転しながらATPを作っている。
MA5は、そのぐるぐる回るところを強くする。ぐるぐる回りやすくする。

呼吸鎖は、プロトン(=陽子。水素原子から電子を取り除いたH+[水素イオン]のこと)を片側に溜め込む。その片側に溜まったプロトンが、雪崩のように落ちて発電機を回す。
MA5はこの角度を急峻にする。(H+勾配を大きくする という意味?)
そのため、雪の滑り落ちる速さが早くなり、発電機がより早く回って光が明るくなる。(=より多くのATPが作られる)つまり、MA5は、ミトコンドリア病の根本的な所、ATPを作るというところに作用しているので、色々な臓器の症状に効果があるはず。

Q: MA5の働きは、巾着袋のようなものだと聞いたが?
A: 巾着袋の紐を強く絞めればば(絞めて力を加えれば?)、なかの小豆が勢い良いく飛び出す。それと似ている。
MA5はカルジオリピンという脂肪に作用して、プロトンを勢いよく噴出する助けをする。

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アポモルフィンについて
リー脳症の患者の皮膚の細胞に「酸化ストレス」をかけると、細胞が死んでしまう。
そこで、世界中の「脳に行く薬?」約300種を購入し、その中から、酸化ストレスを掛けても細胞が死ななくなるような薬を探した。

編者注:酸化ストレスとは
活性酸素は、呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部が、通常よりも活性化された状態になることをいいますが、活性酸素の産生が抗酸化防御機構を上回った状態を酸化ストレスといいます。
(出典:厚生労働省 eヘルスネット)

具体的には 患者の皮膚の維芽細胞が酸化ストレスに脆弱なことを利用し、酸化ストレスで弱らせた維芽細胞に300種類の薬品を投与し、弱った維芽細胞を回復させる(正常に近づける)ような薬を探した。

すでに認可されている「イデベノン」を投与したときの生存率が50%なので、それ以上の生存率を示す薬を探したら4つほどの薬が見つかり、その中でもアポモルフィンが特に低濃度でも効くということがわかった。

しかも、アポモルフィンは他の3つの薬と違って、ATP産生を増やすということがわかった。
こういう薬はあまり知られていない。

酸化ストレスから細胞を守るだけではなく、ATP産生も上げてくれるということで、ミトコンドリア病治療薬としては有望だと判断した。

アポモルフィンは、パーキンソン病の治療薬として長く使われており、しかもヨーロッパでは持続投与が承認されている。(日本では持続的な投与は認められていない)

なお、パーキンソン病治療薬として有効なアポモルフィンの「ドパミンアゴニスト作用」は、今回の「細胞死抑制機能=ミトコンドリア病の細胞を元気にする作用」とは、全く無関係であることがわかっている。

古賀先生たちが開発なさったミトコンドリア病のバイオマーカーにGDF-15というのがあるが、患者の細胞に酸化ストレスをかけてGDF-15の数値を上げた細胞にアポモルフィンを投与すると、GDF-15の数値が正常に戻ることが確認された。(編注:ミトコンドリア病患者では、GDF-15の数値が高くなる)

(編注:これは、バイオマーカーDGF-15が、治験時の治療行為の有効性を評価するための指標として採用可能なことを意味している。治験において、効果を数値で評価することが難しいリー脳症には、有り難いこと?

また、リー脳症のモデルマウスを使った実験では、アポモルフィンを注射したマウスは、運動機能が向上することがわかった。(くるくる回る滑車を使って実験で、アポモルフィンを注射したモデルマウスは、何も投与しないモデルマウスより長時間滑車上で走り続けた)

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アポモルフィンの現状
昨年度、AMED(国立研究開発法人日本医療研究開発機構。内閣府所管の国立研究開発法人=お金を出してくれるところ^^)に応募、採択された。

今やっていること
リー脳症のモデルマウスをつかって、どのくらいの濃度だと運動機能が良くなるかを調べている。

来年の予定
薬がどのように吸収され、どのように効いていくのかを調べる「薬物動態試験」を行う。

2~3年目
幼児・子供に使っても大丈夫か確かめるための「幼弱ラット反復皮下投与毒性試験」を行う。

それと並行して、PMDAと相談しながら、治験のプランを練る
(PMDA:国立研究開発法人日本医療研究開発機構。内閣府所管の国立研究開発法人。薬の認可をする所)

あと2年半くらいで、治験の計画書を提出する予定。
令和4年度位から 治験を始めたいと思っている。

研究体制
海外の協力企業 ブリタニア社、他
国内の協力企業 (株)ノーベルファーマ
治験実施拠点 自治医科大学
研究代表者 小坂仁先生
研究分担者 宮内彰彦先生、久米晃啓先生、相澤健一先生
ミトコンドリア病診断拠点
研究分担者 埼玉医科大学 大竹明先生
研究分担者 千葉県こども病院 村山圭先生

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編集文責;みどりの会

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